□Q30  散骨樹木葬とは?


 最近「散骨樹木葬」という言葉を聞きました。どういうものですか。(52歳男性)

A そもそも「散骨樹木葬」というのは矛盾した言葉です。
「散骨」はスキャタリング(原義は「撒く」)という葬法の日本語訳です。確かに万葉の時代にも散骨はあったようですが、欧米で行われている、火葬した骨を細かく砕いて撒く葬法のことです。
 日本では90年代の初めに「葬送の自由をすすめる会」(事務局・東京都文京区、安田睦彦会長)が自然環境を守る葬法ということで「自然葬」と名づけて行い、広まりました。
 日本では「墓地以外の場所で遺骨を細かく砕いて撒く葬法」として使われています。
 法的には「葬送を目的として行い、国民感情に配慮して、相当の節度をもって行うならば違法ではない」という解釈が有力で、いまや社会的な認知を得たと言ってもいいでしょう。
 これに対して「樹木葬」とは90年代の末に岩手県で始まりました。こちらは山林を墓地としての許可を受けたうえで、遺骨を直接土中に埋め、上に花木を植えるというものです。
 かたや「散骨」は「墓地以外の区域」で行い、「樹木葬」は「墓地区域」で行うものですから、「散骨樹木葬」という言葉がいかにおかしいか、ご理解いただけるかと思います。
 散骨は墓地以外の区域に撒くのですから、散骨するための船の使用料等は必要ですが、墓地使用料は発生しません。
 また、樹木葬は墓地ですから墓地使用料や管理料が必要です。
「散骨樹木葬」なるものは墓地以外の区域の一定の場所に撒き(「散骨だから墓地の許可は不要」との理屈を付けて)、花木を植えるのだからといって使用料まで取っています。
 いくら葬送が自由とは言っても、このようなものは社会的に許される限度を超えています。やはり「相当の節度」が必要に思われます。
 なお最近「桜葬」というのが現れました。これは樹木葬の一種で、墓地の区域内で桜の木の下に場所を定めて遺骨を共同で埋蔵する形式です。
 市民団体のエンディングセンターが提唱し、東京都町田市の霊園で始まりましたが山口、千葉と広がる予定です。
 葬送形態は今後多様になっていくと思われますが、節度が要求されることは言うまでもありません。