知人のお母様が亡くなり、「自由葬で行います」と連絡がありました。自由葬とはどんな形式なのでしょうか。また、香典をお持ちしようと思うのですが、表書きはどうしたらよいですか?(38歳女性)
A 自由葬」というのは新しい言葉です。はっきりと定義が決まっている言葉ではありませんが、一般に無宗教葬と同じ意味合いで使用されることが多いようです。 つまり葬儀を行う形式として「特定の宗教宗派にとらわれずに自由に行うこと」を意味します。
■増加傾向を示す宗教によらない葬儀 日本では94%の葬儀が何らかの宗教宗派に基づいて行われており、また9割が仏教による葬儀となっています。ですから、葬儀を行うとなれば仏教で、しかも家が檀家となっているお寺の宗派で行うのが一般的とされています。しかし、いま特定のお寺との付き合いがない人が増えたことによって、宗教によらない葬儀形式を選択する人が都市部を中心に少しずつ増える傾向にあります。 各宗教宗派は葬儀の形式をもっています。例えばキリスト教であれば讃美歌がうたわれ、聖書が読まれ、お祈りがあり、牧師による説教が行われますし、仏教ではお経が読まれたり、宗祖の教えが読まれたり、場合によっては戒名を授ける、引導を渡すなどの葬式作法が行われます。 宗教儀式を行わないということですから、形式も祭壇の飾りも自由ということになります。祭壇を飾るかどうかも自由ということになります。
■一般的な自由葬の形式 一般には正面か柩の周囲を生花で飾り、次のように行われます。 @前奏(静かな音楽を流す) A開式 B黙祷 C思い出(故人の生涯をスライド、ビデオ、ナレーションなどでたどる) Dお別れの言葉(弔辞) E献奏(故人の好きだった曲を流す) F献花 G遺族代表の挨拶 H閉式 I後奏(静かな音楽を流す、この後遺体との最後の対面である「お別れの儀」を行い、出棺。骨葬の場合であれば遺骨の退場を皆で見送る) 場合によりFとGの順番が入れ替わることもあります。 もちろん「自由葬」というくらいですから、決まった形式はありませんから、どういう形式でやろうとかまいません。 仏教の葬儀でお経が読まれるのに対し、音楽が使われることが多い(生演奏もあります)ので「音楽葬」と呼ぶこともあります。また、これを「お別れ(の)会」と呼ぶこともあります。呼び方も自由なわけです。 欠かしてならないのは、全員起立して「黙祷」を行うことです。お葬式は、形態はどうあれ、故人を弔うためにあるのですから、これをきちんと行わないと葬式としては成立しないと思います。 遺族・参列者が心深く、故人を想い、故人のために祈るときをもつということはとても大切なことです。
■自由葬がもつ問題点 自由葬を行って、しばしば問題になるのは遺族の気持ちの区切りがつきにくいことです。葬式が単なるお別れの場になり、気持ちの深いところで死の厳粛な事実に立ち向かうことがなく、死者に対する心の区切りが不充分になることがあることです。 また、葬式を終えた後、死者に対してどう対処したらよいか迷うこともあります。仏教なら仏壇に向かって供養し、四十九日があり、と追悼の形式が定まっていますが、自由葬ではどうしたらよいかわからなくなってしまうことがあります。 いまは宗教形式から自由な仏壇(記念の道具)もありますし、自由葬だから四十九日をしてはいけないということもありません。形はどうあれ追悼の気持ちを大切にしたいものです。
■表書きは「お花料」が多い 自由葬、お別れ会などの場合の香典の表書きですが、もっとも多いのが「お花料」でしょう。「故人を弔ってお花をお供えします」という気持ちで出されることが多いからです。 といってもこれも決まったものではありません。もちよる人の気持ちで自由であっていいのです。「御霊前」でも「御香典」でも間違っているということではありません。
|
|