いつも不思議に思うのですが、火葬場に行った帰り道に道を変えるのはなぜでしょうか。(42歳女性)
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火葬のために火葬場へ行くときの道と帰りの道を変えるものという習慣は各地で残っています。 これは昔、土葬だった時代の習慣が変わって残ったものです。 土葬のとき、お墓に柩を担いで行き、墓に葬った後、帰り道は行きの道と変えるという習慣がありました。 なぜかというと、死霊が追いかけてこないため、違う道だと、死霊が道に迷い、追いかけられないと考えられたためです。 死というものを、死霊が取り憑いて発生するものと考えられた古い昔の観念がもたらしたものです。ある意味では死の恐ろしさを認識するものであったのです。いまのように医療が発達した時代ではありませんから、どうにかして死に取り憑かれないようにと昔の人は知恵をしぼったのでしょう。その結果、いまでは笑い話のような俗信が生まれました。 土葬から火葬の時代に変わり、この俗信は場を墓から火葬場に替えて生き残ったものです。 もし死霊がいるとして、いまは遺骨を抱いて帰るのですから、行きの道と帰る道とを変えても意味がないように思うのですが。 この話は俗信ですから、いまの時代にあっては守る必要のないものです。しかし、この話は、死が通常のものではないリアリティをもったもの、遺族の生活を脅かし、精神的に強い悲しみをもたらすもの、という共通した認識が昔の人にあったことを教えてくれます。
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