部下の方、後輩の方の弔辞を読むのはつらいものがあります。人生は無常なものだとつくづく感じさせられます。どれだけ故人を大切な存在として見ていたかということにポイントをおくと、ご遺族も慰められることでしょう。
(例1)
金田友彦君、あまりに早く逝ったあなたの霊前で語ることになろうとは考えてもいませんでした。
以前から金田君は「佐藤さんの葬儀は私がしてあげますから心配は無用です」と請け負ってくれていたのですが、これでは順序が逆です。 金田君は、私が調査課長のとき係長として、企画部長のときは課長として、営業本部長のときは営業企画部長として、ずっと補佐してくれました。 「君はいつも僕の後ろをついて来るんだね」と言うと「佐藤さんには僕がいないと駄目なんですよ。佐藤さんは自分の関心のあることだけに目を向けて周りを見ない、事務はからっきし駄目ときているから、会社も心配してるんじゃないですか」とあの巨体をふるわせて豪快に笑いました。 確かに、金田君は私の良き女房役でした。欠点の多すぎた私は、新しい仕事に任じられる時は、人事部に掛け合って金田君をもらってきたのが真相でした。 痩せた私と巨体の金田君、社内では「サキン」とまとめて呼ばれることが多く、自分では絶妙なコンビと自慢していましたが、自分を追い越して活躍できる才能をもっていただけに、金田君のために幸せだったのか反省させられています。
入院中お見舞いした時、すっかり痩せて見違えるようになってしまい、「佐藤さん、力になれなくて済みません」と言うのです。私は「今度は僕が太って逆になって、僕が女房役になろう」と言いますと、「佐藤さんには無理ですよ。チクショーもう一度元気になりたい」とくやしがっていました。
金田君、君には元気になってもう一度活躍してほしかった。会社を実質的に支えてきてくれた君に、今度は表舞台で活躍してほしかったと思います。 それもかなわなくなりました。今は、心からのご冥福をお祈りいたします。
男性の会社の部下の例でした。分身を削がれる気持ちが出たものです。
次は、女性の方の例です。しみじみとした感じの出た弔辞です。
(例2)
長田芳江さん、謹んでお訣れの言葉を述べさせていただきます。
私たちは○○流華生会神田支部に属して、ご一緒に生け花の世界で勉強をさせていただいてまいりました。 芳江さんの花は、ご性格を表して、きりっとしてりりしいものがございました。ご器用でらっしゃいましたから、枝の切り取りにしましても、手際がよく、ほれぼれとするほどでございました。 昨年の華展でも梅を素材に出品されましたが、その出来栄えの見事さで審査員特別賞を受賞され、将来の華生会を背負って立つ方と嘱望されておいでになりました。
私どものような小さな支部でございましても、運営するとなると、さまざまな雑用がございます。芳江さんは、ご自身もご家庭を抱え、また、教えてもいらっしゃるお忙しい日々を過ごされながら、毎週水曜日には会に顔を出され、事務の仕事をこなしていただきました。 芳江さんなくしては華生会神田支部の運営はできなかったと言っても過言ではありません。月1回の定例会、年2回の華展、早くから来て準備や受付を取り仕切っていただき、力不足の支部長である私を本当によく支えていただきました。
いずれは私の後継者になり、会を、支部を今以上に発展させていただけるものと信じておりましたものですから、今回のあまりにもお早い突然のご逝去に、茫然自失となるばかりでございます。 これまでの会のためのご尽力、ほんとうにありがとうございました。安らかなご冥福をお祈り申し上げます。
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